本稿は、主に財務報告の観点から、公的組織において内部統制を構築する際の留意点につき、民間営利企業との比較を通じて考察することを目的としている。
コーポレート・ガバナンスを構成する多様な要素の1つとして内部統制を捉えると、公的組織の場合、組織のプリンシパル(出資者)が株主ではなく、その目的が利潤最大化ではないという事業特性と、資源の調達・配分等における公的組織固有の社会的制約条件を考慮することが重要と考えられる。こうした点を踏まえると、2005年12月に企業会計審議会より公表された「内部統制基準案」の枠組みを公的組織に適用するに当たっては、1.的確な非財務情報の作成、2.正確にコストを算出するためのシステム構築、3.予算の適正性に関する評価、4.予算による事前統制と財務報告による事後統制の適切な役割分担、等の視点が重要となろう。
キーワード:内部統制、監査、コーポレート・ガバナンス、公的組織のガバナンス、財務報告、予算制度
掲載論文等の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。