ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2005-J-13

米国の対外赤字は世界全体の問題か

モーリス・オブストフェルド

 米国の経常収支赤字は、年間7,000億ドルを超えており、19世紀初頭以降、(米国のGDP比でみて)かつてない水準に達している。この赤字は、世界全体で利用可能な対外余剰のほぼ3/4を吸収している。このペースで経常収支赤字が続けば、米国の対外負債・GDP比はほぼ1に収束するであろう。経常収支を均衡させるように急速な調整を行なえば、非常に急激な米ドルの実質減価が必要になることを示唆する分析結果も出てきている。本稿では、ドルの「ソフト・ランディング」を予測する楽観的な議論の限界を検討する。特に、金融のグローバル化の進展によって、米国はさらに大規模な経常収支赤字をより長期にわたって容易に計上できるようになっているとの見方に焦点を当てる。実質金利差に基づく簡単な計算をいくつか行なってみると、市場では必要なドルの減価の大きさを過少評価している可能性が示唆される。

キーワード:経常収支調整、国際資本移動、為替レート


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