ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2005-J-7

金融資産の譲渡の会計処理に関する一考察
―利益計算との関係を中心に―

吉田慶太

 金融資産の譲渡の会計処理は、金融資産が細分化されて取引されるという証券化取引の実態、特にそうした取引における留保リスク・便益の状況を貸借対照表上、適切に表示するという情報ニーズに応える形で検討が進められてきた。しかし、金融資産の属性や保有目的に応じて異なる会計処理方法を使い分けるという混合モデルを前提とした現行の会計基準のもとでは、損益計算書の利益計算面との整合性、特に会計情報としての測定の信頼性や譲渡対象である金融資産の属性や保有目的との関係が重視されており、貸借対照表上での証券化取引の実態開示は、これらの制約下での検討にとどまっている。今後、混合モデルを前提としつつ、貸借対照表における証券化取引の実態開示と損益計算書における利益計算といった異なる目的を達成する方向で金融資産の譲渡の会計処理を検討するに当たっては、例えば、利益計算上の制約条件にかかる適用方法の工夫や注記情報の拡充、さらには損益計算書とは別に貸借対照表面での情報提供機能を拡充するといったアプローチも考えられよう。

キーワード:金融資産の譲渡、認識・認識中止、利益計算、証券化、財務構成要素アプローチ、リスク・経済価値アプローチ、リスクと便益


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