ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2004-J-1

生産要素市場の歪みと国内経済調整

大谷聡、白塚重典、中久木雅之

 本稿では、構造問題として、生産要素の部門間での移動の不完全性や部門間での生産要素の限界生産性の乖離という生産要素市場の歪みに伴う非効率的な資源配分に焦点を当て、生産要素市場の歪みが一国経済に及ぼす定性的、定量的な分析を行う。生産要素市場の歪みは一国の生産可能性フロンティアを内側にシフトさせ、実現可能な産出量水準を低下させる。本稿の分析からは、バブル崩壊以降における実質GDP成長率の低下(▲3.6%)のうち、約0.5%は生産要素市場の歪みの悪化によってもたらされたことが明らかにされ、生産要素市場の歪みという構造問題の悪化がバブル崩壊以降の景気低迷の一因となっていることが示される。さらに、生産要素市場の歪みは、市場メカニズムを通じて自律的に改善されないため、生産要素のミス・アロケーションを是正する措置が採られなければ、たとえ金融・財政政策を通じて有効需要を短期的に増加させても持続的な成長にはつながらない。したがって、持続的な経済成長を可能にするには、生産要素市場の歪みを是正し、生産要素の効率的なアロケーションを実現するための施策が必要である

キーワード:構造問題、ヘクシャー=オリーン・モデル、特殊要素モデル、生産可能性フロンティア、TFP


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