金融研究第16巻第1号(1997年3月発行)

会社分割の法律問題
―債権者の扱いを中心に―

 本論文は、商法学者(前田庸、田村諄之輔、江頭憲治郎、神田秀樹、吉原和志)と日本銀行のスタッフが参加した会社分割研究会(事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。本報告書では、わが国商法上には未だ規定のない会社分割法制の立法論を検討している。とくに債権者の扱いを中心としたのは、会社分割では、会社財産の帰属の変更が不可避であるため、債権者保護が重要な問題となりうるからである。
 本報告書の構成は、Tで会社分割の意義と目的、方法を概観した後、Uで各国の会社分割法制を比較し、Vで現行会社法における債権者保護の意義を論じた後、Wでは、債権者保護に関する会社分割の立法論を検討する。立法論では、営業の移転+株式の分配として捉える立法と包括的な会社分割立法として捉える類型の可能性、債権者異議権の意義、債務を連帯債務として引き継ぐ会社分割、連帯債務としない会社分割、の順で論じる。
 そこで明らかとなったのは、次のような点である。第1に、会社分割に際しては、これまで被分割会社の債務を分割会社が連帯債務として承継することが必要であるとの見方が強かったが、債務者に異議権を付与したり、情報開示を充実することにより、連帯債務としない会社分割を認めることは、十分可能ではないか。第2に、営業の移転+株式配当という形の会社分割については、他の会社分割とは異なり、格別の債務者保護手続なくこれを認めることが可能ではないか。そして第3に、上記のほかに、債権者保護の問題に限っても会社分割独自の論点は決して少なくはなく、いろいろと検討するべき点があるといえる。

キーワード:商法、会社法、銀行法、会社分割、持株会社、合併


本稿の内容や意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

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