金融研究第20巻第3号(2001年9月発行)
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「デットとエクイティに関する法原理についての研究会」報告書

 本稿は、法学者・経済学者・会計実務家(秋葉賢一、池尾和人、岩村充、神作裕之、神田秀樹、藤田友敬、前田庸、松下淳一、柳川範之、山田誠一<50音順、敬称略>)をメンバーとする「デットとエクイティに関する法原理についての研究会」(事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。
 現在のわが国の企業金融構造は、銀行借入依存型から資本市場調達型への移行過程にある。また、株式交換・株式移転制度、会社分割制度を導入する商法改正や、民事再生法の施行など、企業金融に関連を有する会社法制や倒産法制も、近時、大きな変化をみせている。こうしたなか、ベンチャー企業のファイナンスを円滑化するための対応やトラッキング・ストックの導入といった資本市場における資金調達手段の一層の拡充などを求める声が聞かれていることもあって、法制審議会でも株式制度の見直しを含む会社法制の大幅な見直しの審議が開始されている。
 今後、金融・資本市場法制のあり方をデザインしていくうえでは、「株式とは何か、社債とは何か」、また、「株主や社債権者等の投資家間の利害調整は、いかに行われるべきか」といった問題を分析し、株式と社債に関する「法原理」を探究してみることも、意義があるものと考えられる。また、そうした分析を行うにあたっては、経済学(ファイナンス理論)における議論を参照していくことも有益であろう。
 こうした問題意識に基づき、本報告書は、まず1章において、「近年のファイナンス理論における展開(「証券の設計」の議論)」を踏まえつつ、本報告書の軸となる分析の視点として、「『キャッシュ・フローに対する権利』と『コントロールに関する権利』がいかに配分されているか」といった視点を提示している。
 次に、こうした視点を軸として、2章では、会社の創業、資金調達、再編、経営悪化、破綻といった、いわば会社の一生におけるさまざまな場面における問題(例えば、米国型ベンチャー契約導入に関する問題、新株発行における有利発行規制に係る問題、株式交換・株式移転や会社分割時の株主保護と社債権者保護の問題、社債管理会社および社債権者集会に関する問題、会社破綻時の利害調整に関する問題)を取り上げ、また、3章では、個々の証券の設計に関する問題として、株式と社債の中間的な形態である優先株、利益参加社債、劣後債、永久債等の「ハイブリッド証券」や、近時話題となることが多い「トラッキング・ストック」を取り上げて、分析している。
 最後に、4章では、今後の金融・資本市場法制のあり方を考えていくうえで特に重要と思われる論点を示すことにより、本報告書を総括している。

(本報告書は、当初、2001年5月に公表された。その後、『金融研究』への掲載〈2001年9月〉に当たり、若干の編集上の変更が加えられている。)


本稿で示されている意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

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