金融研究第20巻第1号(2001年1月発行)
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望ましい物価上昇率とは何か?:
物価の安定のメリットに関する理論的・実証的議論の整理

白塚 重典

 物価の安定とは何か、という金融政策にとって極めて基本的な問題は、技術革新や流通革命といったマクロ経済の構造変化が進展するもとでは、必ずしも単純に答えが出る問題ではない。実際に観測される各種の物価指標の変動には、さまざまな一時的なショックと計測誤差が影響している。このため、物価の基調的な変動が安定しているか否かを判断することは、極めて難しい作業である。本稿では、物価安定のメリットについて、これまでの学界の知見を整理するとともに、望ましい物価上昇率の水準とは何か、また、望ましい物価上昇率と金融政策の目標となる物価安定の関係はどう考えられるのか、を検討する。そこでは、持続的な経済成長と整合的な、インフレでもデフレでもない物価環境を実現することの重要性を強調する。そのうえで、物価の安定の具体的な定義として、「統計上の物価安定」と「持続的な物価安定」という2つの考え方があることを示し、金融政策の運営上は、両者の整合性をいかにして担保していく枠組みを構築していくか、との点が重要であることを指摘する。

キーワード:金融政策の究極的な目標、インフレ・デフレの社会的コスト、統計上の物価安定、持続的な物価安定、限定された裁量


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