金融研究第20巻第1号(2001年1月発行)
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「技術革新と銀行業・金融政策
― 電子決済技術と金融政策運営との関連を考えるフォーラム」報告書 ―

 日本銀行は、「電子マネー」をはじめとする電子決済技術の発達が金融政策運営にもたらす影響を検討するため、平成9年12月に「電子決済技術と金融政策運営との関連を考えるフォーラム」を設立し、平成11年5月に中間報告書を公表した(『金融研究』第18巻第3号)。中間報告書発表後は、同フォーラムの名称を、「技術革新と銀行業・金融政策――電子決済技術と金融政策運営との関連を考えるフォーラム」に変更し、検討対象を情報技術革新一般にまで広げ、情報技術革新によって金融経済構造がどのように変化し、金融政策がどういった影響を受け得るのかについて、精力的に議論を行った。本報告書は、中間報告書での議論を踏まえつつ、その後の議論で明らかになった点を取りまとめたものである。
 現在進行している情報技術革新は、コンピュータの急速な発達とインターネットの普及に代表され、その特徴は、(1)情報処理技術と通信技術の融合、(2)そのもとでの情報処理・伝達の迅速化、低コスト化、広域化(グローバル化)、(3)普及スピードの驚異的な速さと捉えることができる。
 こうした情報技術革新は、まずインターネット上での電子商取引を可能にしており、その規模は急速な勢いで拡大している。電子商取引の拡大によって、従来から行われてきた財・サービス取引形態(流通部門の存在や系列・下請け取引等)が変化する可能性があるほか、価格水準の低下や頻繁な価格改定の実現など価格形成面でも変化がうかがわれる。
 次に、情報技術革新が金融面に与える影響については、情報技術革新が進んだとしても、金融に求められる本質的な機能(決済サービスの提供、リスク仲介、情報生産、流動性供給)に変化は生じないものの、金融商品・サービスの具体的な内容やその担い手は大きく変化しうることが確認された。
 さらに、インターネットは地理的・空間的な制約を軽減する性質を持つため、「国境」という概念が希薄化し、貿易・金融取引面でグローバル化が一段と進展する可能性が高い。
 以上のように、情報技術革新の進展によって、金融政策が働きかける対象である金融経済活動やその枠組み(構造)が変化する可能性がある。しかも、情報技術革新による変化は、想像以上のテンポで進む可能性も否定できない。金融政策に対する正確な理解が、適切な金融政策運営の大前提であることを踏まえると、中央銀行は、情報技術革新に伴う変化を迅速かつ正確に捕捉し、政策判断に当たって直面する不確実性をできるだけ小さくするよう最大限の努力を払う必要がある。そうした観点からは、金融経済の分析能力の向上や経済統計の一層の拡充・整備も重要となる。
 一方、情報技術革新が金融政策の波及・効果に与える影響については、資本市場の発達や、金融仲介業務への異業種の参入、グローバル化の進展によって、従来以上に金利を通じた効果が重要になるなど波及経路の重要度に変化が生ずる可能性がある。しかし、情報技術革新によって、金融政策の必要性や有効性自体が失われることは当面あり得ないと考えられる。

(本報告書は、当初、2000年11月に公表された。その後、『金融研究』への掲載〈2001年1月〉に当たり、若干の編集上の変更が加えられている。)


本稿で示されている意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

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