日本銀行金融研究所 貨幣博物館
貨幣研究に関する論文の要旨紹介

わが国紙幣制度の源流について
  −とくに伊勢国山田羽書三百年のあゆみ

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妹尾守雄
【 要旨 】
 わが国における紙幣の起源は、室町末期ないし近世初頭−すなわち16世紀末ないし17世紀のはじめ−に伊勢地方に登場した「山田羽書」にまでさかのぼることができる。本論文は、この山田羽書の生成・発展とその歴史的意義を検討しようとするものである。
 山田羽書は、一地方において自然発生的に成立した私的紙幣でありながらも、(1)江戸時代を通じて幕府公認の紙幣として流通していた、(2)江戸期の地方経済上重要な役割を果たした藩札の起源的存在である、(3)十分な兌換準備と堅実な発行制度に裏付けられた信用通貨であった、といった点で、わが国貨幣史上重要な意義をもっている。
 山田羽書がこうした特徴をもちえた背景としては、その発行・流通制度が次に掲げるように徳川幕府の指揮により整備されていたことが指摘できる。すなわち、(1)山田羽書は山田奉行により公認された三方会合所の三役による監督下で、5〜10名の株主からなる株仲間の連帯責任により発行された、(2)乱発防止のため、羽書の発行株主総数や発行限度額が同じく山田奉行により定められるとともに厳格に運用されていた、(3)万が一羽書が兌換不能となった場合には質入れされた不動産の売却により弁済する、といったかたちで羽書の通用価値が保証されていたのである。

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