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『金融研究』巻頭エッセイ 第3シリーズ 「貨幣に見る近代日本金融史」
3−8 戦後インフレーションの収束と高度経済成長
B千円券
B千円券<1950(昭和25)年1月発行>
C一万円券
C一万円券<1958(昭和33)年12月発行>
C五千円券
C五千円券<1957(昭和32)年10月発行>
C千円券
C千円券<1963(昭和38)年11月発行>
 1950年に勃発した朝鮮戦争をきっかけとして、日本は1970年代前半まで高度経済成長期を迎えることとなった。経済規模の拡大にともなって通貨も高額なものが必要となった。こうして、千円券に続いて、五千円券、一万円券という高額面の日本銀行券が発行された。

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 戦後の激しいインフレーションは、1949(昭和24)年3月にGHQの財政顧問ジョゼフ・ドッジが発表した緊縮政策(いわゆるドッジ・ライン)によって収束した。この政策は、復興金融金庫の貸出停止(同年3月)、1949(昭和24)年度における超均衡予算の編成、1ドル=360円の単一為替レートの設定、経済復興資金としての対日援助見返資金特別会計の設定(いずれも同年4月)等からなっていた。この結果、物価上昇は鎮静化したが、一方で、景気後退が顕著となった。
 1950(昭和25)年6月から始まった朝鮮戦争は、日本に特需をもたらすとともに、設備投資ブームを起こし、景気回復につながった。米国が1951(昭和26)年4月に戦略物資の買付けを停止したため、一時的に不況の様相を呈したが、1952(昭和27)年には民間設備投資が盛上りを見せ、これ以降の日本経済は、経済援助に依存しない自立的な成長軌道に乗ったとされる。
 1955(昭和30)年頃には主要な経済指標は戦前水準を回復し、1956(昭和31)年度『経済白書』は、「もはや戦後ではない」と宣言した。この頃を境に、日本経済は戦後復興の局面を脱し、輸出、技術革新をともなった活発な設備投資、旺盛な消費需要に支えられた高度成長の時代を迎えた。
 これ以後、1970年代前半まで、日本経済は比較的長期の景気拡大と短期の不況を繰り返しながら、拡大傾向を辿った。実質GNPでみると、1973(昭和48)年までプラス成長を続け、1955(昭和30)から72(昭和47)年にかけての実質GNP成長率は、年平均で10%となった。この間、1954(昭和29)から57(昭和32)年にかけては、民間設備投資の増加、「三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)」の登場による旺盛な消費に支えられ、「神武景気」と呼ばれる31ヶ月間の景気拡大を示した。その後、「なべ底不況」をはさんで、1958(昭和33)から61(昭和36)年にかけては、「投資が投資をよぶ」設備投資に牽引された「岩戸景気」と呼ばれる42ヶ月にわたる景気拡大期を迎えた。1962(昭和37)年の不況とその後の景気回復、1964(昭和39)年から65(昭和40)年にかけての「40年不況」の後、1965(昭和40)年から70(昭和45)年にかけては、57ヶ月間におよぶ「いざなぎ景気」を経験した。1970(昭和45)年から71(昭和46)年にかけての景気後退の後、米国による金とドルの交換停止と円の切上げ(いわゆるニクソンショック、1971年8月)にもかかわらず、「日本列島改造ブーム」等により1972(昭和47)年から74(昭和49)年にかけて景気は拡大したが、第1次石油ショック(1973年10月)後の不況を経て、戦後日本の高度経済成長は終了し、安定成長の時代へと移行した。
 1950(昭和25)年から1975(昭和50)年にかけての物価の動きをみると、消費者物価は、年平均で7%の上昇を示した。この間、年次ベースでマイナスとなったのは1955(昭和30)年(-0.8%)、1958(昭和33)年(-0.6%)のみであり、一方、1973(昭和48)年から74(昭和49)年にかけて物価上昇が加速し(いわゆる「狂乱物価」)、75(昭和50)年にかけて2桁の上昇となった。
 この間、全国銀行貸出は、1950(昭和25)年末の9947億円から1975年には88兆7672億円へと89倍(年平均伸び率21%)の伸びを示し、高度経済成長を金融面から支えた。
 日本銀行券発行高は、1950年末の4220億円から1975年末には12兆6171億円へと30倍の増加を示した。経済規模の拡大にともない、高額紙幣発行の必要性が高まり、1950(昭和25)年の千円券(注)に続き、1957(昭和32)年には五千円券、1958(昭和33)年には一万円券が発行された。券種別発行高をみると、一万円券は1962(昭和37)年以降千円券を上回り最も発行高の多い紙幣となっており、1988(昭和63)年以降は枚数ベースでも最多である。
(注)千円券については、終戦直後の一時期(1945年8月〜1946年3月)に発行されたことがある。
[大貫摩里、日本銀行金融研究所研究第3課]
『金融研究』第21巻 第4号, 日本銀行金融研究所, 2002年
【参考文献】
玉置紀夫、『日本金融史』、有斐閣、1994年
日本銀行百年史編纂委員会、『日本銀行百年史』第5巻、1985年
----、『日本銀行百年史』第6巻、1986年
----、『日本銀行百年史』資料編、1986年
日本銀行調査局、『図録日本の貨幣』第9巻、東洋経済新報社、1975年
日本銀行統計局、『明治以降本邦主要経済統計』1966年
吉川洋、『高度成長 日本を変えた6000日』、読売新聞社、1997年
土志田征一編、『経済白書で読む戦後日本経済の歩み』、有斐閣、2001年
安藤良雄編、『近代日本経済史要覧』、東京大学出版会、1975年
日本統計協会、『日本長期統計総覧』第3巻、1988年
----、『日本長期統計総覧』第4巻、1987年

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