貨幣博物館 常設展示図録
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[特産品の生産と藩札発行]Production of Local Specialties and the Issuance of Clan Notes領内の特産品を藩札で買い上げ、藩外で売って得た代金を兌換準備にあてる藩もあった。これらの藩は、領内での金貨・銀貨の使用を節約するとともに、領内の産業を盛んにしようとした。memo券面に「銭○匁」と記された藩札(銭匁札)もあった。これは、一定の枚数の銭を銭1匁と数えるもので、銭何枚を銭1匁とするかは藩ごとに異なっていた。memo土佐藩が商人に黒砂糖を売り渡したことを示している。ゆるやかなお金の統一 55黒砂糖切手銭匁札 肥後熊本藩札産業振興に藩札を活用する藩があった一方、財政赤字補てんのために藩札を過剰に発行する藩もあった。傘札 美濃加納藩札Unit of Umbrella, Kano Clan Note加納藩では、幕末にかけて特産品の傘の専売制度を設け、傘やその部品のかせ糸などの数量を額面とする藩札を発行した。陸奥仙台藩札Sendai Clan Note伊予大洲藩札Ozu Clan Note[財政赤字と藩札発行] Fiscal Deficit and the Issuance of Clan Notes財政赤字が膨らんだ藩は、藩士や領民への支払いのために藩札を過剰に発行し、金貨・銀貨との兌換が滞ることがあった。このような藩札の価値は下落することが多く、領民から受け取りを拒否されることもあった。陸奥会津藩札Aizu Clan Note18世紀後半以降、両建ての計数銀貨が導入され、匁建ての秤量銀貨はほとんど使われなくなっていったが、その後も、西日本を中心として、匁建ての銀札が多く発行された。「国産会所」や「産物会所」などとよばれる藩の役所が領内の生産者に藩札を貸し付けて特産品などの生産を行わせ、これを独占的に集荷し、売上金を藩の収入とした。藩札発行の主な理由多くの藩は地域での貨幣需要を賄うために藩札を発行した。藩専売制藩札の額面表示

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